Stephen Kenn – The Bowline Collection for COLONY 2139

Stephen Kenn – The Bowline Collection for COLONY 2139

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STEPHEN KENN – THE BOWLINE COLLECTION FOR COLONY 2139

Interview by Sarah Ann Hartzog
Photography by Lani Trock

初めて会った見知らぬ人に、「歓迎されている」と感じることは少ないが、ステファン・ケンとベックス・オッパーマン夫妻は、その意味で別格だった。
その日わたしは、ロサンゼルスのダウンタウンにある彼らの非の打ちどころのない自宅兼アトリエを訪れる機会に恵まれた。そこは文字通り、すべてが揃っている。茶室、プライベート空間、ショールーム、コーヒーショップ。ケンのつくり上げたその空間は、とてもクリーンでモダンであるが、同時に、独特の暖かみがある。そこで20分過ごした後、私はその日の残りの予定をすべてキャンセルすることに決め、代わりにその後の長い時間を彼らとそこで過ごすことになった。その時私は、自分の名を冠したブランドを率いる有能なデザイナーであるケンが、デザイナーという既存の枠組みに収まるような人間ではないことを知った。デザインそれ自体に対する情熱はもちろんだが、彼は他者とのつながりや、より良い相互理解のために、デザインというツールを選んだのだ。

あなたのデザイン美学は、ある意味とてもノスタルジックですが、その影響はどこからきているのですか?

6年前、私はイーストロサンゼルスのある倉庫に、軍需品が山のようにしまってあることを知りました。私が最初に立ち上げたデニムブランドは「Iron Army」という名前で、その「アーミー」という言葉が持つ生々しいイメージに捉われないよう、かなり繊細に気を使っていました。というのも、当時の私たちの考えは、「Army」という言葉のコンセプトを取り上げて、その強力なコミュニティーの中で話題になればいい、というものだったからです。倉庫について知ったのは、けれど、そのデニムブランドを通じて繋がった人脈からでした。
いよいよ、その倉庫を訪れる機会を得たのですが、足を踏み入れた途端、そのクレイジーさに度肝を抜かれました。倉庫は軍需品で溢れかえっていたんです。これほどまでの量の軍需品を目にすると、誰でも否応なしに、それらが戦争のための道具であることを思い知らされるでしょう。例えば、アーティスト、アイ・ウェイウェイの作品に、1粒1粒がハンドメイドされている磁器製のひまわりの種を用いて、中国に生きる個人を象徴しているというものがあるのですが、その作品を見るという行為は、捉えどころのない大海を見るようなものでもあります。おそらく人間の脳は、それほどまでの規模の物事を的確に捉えることはできないんだろうと思います。私はその倉庫の中を歩き回り、いろいろなものを手に取っては観察しました。監視カメラはありませんでしたから、何時間もそこに腰を下ろし、夢中でメモを取りました。その結果、私はそこにあった軍需品と、それぞれが体現する歴史に恋をしたのです。私はそこにあったものを手に取っては、何かほかのものに見えてこないだろうかと、何回も再解釈しようと挑戦しました。ときにそれらを分解し、構造を把握しようと努めました。
そうして作ったのが、ミリタリーのダッフルバッグを解体し、そのパターンやディテールを学び、より現代的に再解釈したバックパックでした。レザーを部分的に用いることで、よりモダンな仕上がりになりました。こうした経緯で生まれたのが、次のブランド、「Temple Bags」です。そしてこれが、ミリタリーファブリックを使ったソファのアイデアに繋がっていきました。

デザイナーの中には、まずコンセプトづくりから始め、その後、それに合った素材を選んでいくという人もいますが、素材そのものがコンセプトの着想源になることも、もちろんあります。つまり今回のコレクションは、後者でしょうか?

そうですね。私たちはまず、実験から始めました。この家具の骨格となる構造が、家具に使われた歴史のない素材を支えられる強度があるかどうか、あるいは、それ単体では強力なインパクトがあるファブリックだけれども、家具には向かないのか、というように。
ミリタリーファブリック以外を使った初めてのコラボレーションは、サイモン・ミラーとのコラボレーションでした。私たちはキャンバスをインディゴに手染めし、その後で、ジーンズのリベットを再現するために、ソファのフレームをアンティーク調の銅メッキにしました。私たちは常に、プロセスを重視していますが、これは、それがコラボレーションであっても、新作であっても変わりません。プロセスそのものが我々をインスパイアしてくれるのです。人々は、一旦ものづくりの過程を理解すると、それを他のプロジェクトに応用しようとします。私は自分のデザインしたものが、他者のクリエイティビティを刺激し、激励するような存在であった欲しいと思っています。そうでなければ、僕のデザインなんて、他者にとっては自分に無関係な雑音でしかありませんから。

それは「なぜソファーを作るに至ったか?」という問いにも通じるように思えますね。

家具に興味を持った時、私はまずソファーを分解して、その構造を学びました。部品が多く、非常に興味深かったのですが、結局私たちは、そのソファーをカバーで覆ってしまったのです。布張りをして、中の部品を隠すように。その時に思ったのです、カバーで覆う代わりに中身を露わにして、見えてもいい面白い素材を使ったらどうだろう、と。そこで参考にしたのが、スイス軍のベルトです。このベルトは、兵士たちの道具を運ぶ駄馬に巻かれるものなのですが、それがこのソファーの後ろに使われているベルトなのです。

あなたは複数のブランドを持っていますね。あなたのデザインはこれまでにどのように発展してきましたか?

若いデザイナーであれば、「自分はまだ本物じゃない」という不安に苛まれ、目立つことだけを念頭に置いたオーバーなデザインや、やや見かけ倒しのデザインをしてしまいがちです。けれど私は、これまでの道のりにおいて、自分が成長することができたと自負しています。今まで自分の中になかったカテゴリーのデザインする機会を多く得ることができましたし、最終的には、自分の名前でプロダクトをつくることができました。私は新人デザイナーが抱えているような不安を払拭し、自分が作ることのできる最高のソファーやバッグを作っています。シーズンやトレンドに自分を合わせていく、というようなことはしません。私は優れたものを作り続けるだけです。その点で言うと、今まで作ってきた中でも最高のものを作ることができたのではないかと感じています。

最近は COLONY 2139のための「Bowline Collection」に取り組んでいらっしゃいました。このプロジェクトのために日本を訪れた経験は、デザインプロセスにどのような影響を与えましたか?

私はずっと日本文化に敬服の念を抱いてきました。なのに、実際に日本を訪れ、自分の目で日本の街並みを眺めることができたのは、ほんの最近のことなのです。日本にはインスパイアする数多くの要素があることは間違いなく、ディテールに向けられる注意深さと鋭敏なナラティブがどこに行っても存在します。それが小売店であれ、レストランであれ、公園であれ、そこには常に物語があります。この思慮深さは、非常に魅力的に感じられました。その意味性を理解し、自分のデザインに還元したいと思っています。

その日本での経験は、デザインに対するあなたの思想にどのような影響を与えましたか。より哲学的な観点から教えていただけますか?

日本での経験はとてもリラックスしたものでした。見聞を広めたり、いろいろな物事を観察できました。バス停の前で整然と一列に並ぶ人々を目たり、人々が紹介を受けた時に行うお辞儀などはとても興味深いものでした。日本では、他者に対する尊敬の念が身体を通してはっきりと示されるのです。西洋の文化だとパーソナルな空間や、自己紹介の場などではもっとリラックスしていますよね。とはいえ、私たちは日本の挨拶の重要性について学ぶことがたくさんあると思います。同時に、日本では人々が他者に対して心を開いたり、お互いの思案や疑問を共有したりすることに苦労していると何度も聞きました。西欧とは異なる文化ですよね。私は、互いの文化から学び合うことがたくさんあると感じています。COLONY 2139 との素晴らしいコラボレーションの機会を得られたことを心から嬉しく思うとともに、今後も面白い試みに共に取り組めることにワクワクしています。

www.stephenkenn.com